問題提起:
保育士としてのキャリアを考える際、運営法人の選択は重要です。しかし、社会福祉法人や株式会社など、選択肢が多すぎてどれが最適か迷うこともあります。

記事を読んでわかること:
この記事では、保育園の運営法人の種類やそれぞれの特徴、メリットについて詳しく解説します。社会福祉法人と株式会社の比較や、各運営法人の労働環境、給与水準などを通じて、自分に合った選択肢を見つけるためのポイントを提供します。

記事を読むメリット:
この記事を読むことで、保育士としてのキャリアを築く上で重要な運営法人の選択について理解が深まります。自身のライフスタイルやキャリアの目標に合わせて、最適な運営法人を選ぶためのヒントが得られます。

運営法人の種類

かつては、保育園を設置できるのは、市区町村と社会福祉法人に限られていました。しかし、2000年の規制緩和以降、株式会社を始めとしたさまざまな法人で保育園を設置できるようになりました。以下が具体的な法人種類になります。

社会福祉法人

社会福祉法人は、福祉事業を行うための非営利法人です。その目的は、地域社会の福祉増進に貢献することです。保育所だけでなく、介護施設などの高齢者サービスも提供します。設立や運営には細かい決まりがあり、認可されると国から補助を受けることができます。給与水準は比較的安定しており、長期的な経営が特徴です。

株式会社

株式会社は、営利を目的とする企業形態の一つです。日本の法人の約9割は株式会社が占めていると言われています。保育業界では2000年に規制緩和され、保育施設を運営するケースが増えています。福利厚生が充実しており、若い先生が多いため、キャリアの幅も広がります。

宗教法人

宗教法人は、教義を広め、儀式行事を行い、信者を教化育成することを目的とする団体です。戦前や戦後初期には、幼稚園や保育所の運営は主に宗教法人や個人によって行われていました。現在は他の運営法人同様に厚生労働省の認可を受ける必要があります。宗教の教えを取り入れた行事や活動を行う場合もあり、その宗教団体によって特色が異なります。

学校法人

学校法人は、私立の幼稚園や中学校、高校、大学などの設置を目的に設立される公益法人です。保育園も含まれることがありますが、どちらかというと幼稚園の運営を行うところが多く、学校教育の規模や方針によって異なります。

NPO法人

NPO法人とは特定非営利活動法人のことで、非営利団体の一種であり、社会貢献活動や社会問題を解決することを活動の目的とする法人です。税金の優遇措置がある法人でもあります。保育園を運営する場合もありますが、その活動内容は多岐にわたります。

個人経営

個人経営は、個人が保育園を運営する形態です。規模は小さくなりがちですが、地域に密着した運営が可能です。また前述した宗教法人同様、戦前や戦後初期は個人経営の保育施設が日本の保育の重要な一端を担っていました。

それぞれの施設数は?

厚生労働省が毎年実施している 「社会福祉施設等調査(厚生労働省)」によると、令和4年10月現在、国内において、30,358の保育所等の施設があり、この中で、多い運営法人順に並べると

社会福祉法人     16,170施設
市区町村(公営)  7,737施設
営利法人(株式会社)3,362施設

となっており、この3種類の運営法人で保育所等の、実に8割弱を占めている事になっています。
公営の保育士になると地方公務員に位置づけられるため、今回は社会福祉法人と株式会社に絞ってそれぞれの詳細を確認していきたいと思います。

社会福祉法人の特徴とメリット

長期的な経営
社会福祉法人は、地域に根付いた運営が特徴です。地域のニーズに応えることが求められますが、その分、地域の支持を得やすく、長期的な経営が期待されます。

年齢層の厚さ
前述したように、2000年以前は保育施設の運営は社会福祉法人か市区町村などの公営に限られていたため、そのころからのノウハウを含めた経験豊富な職員が多く、年齢層の厚さがあります。先輩の指導や助言を受けながら、スキルを磨くことができます。

地域に根付いた運営
社会福祉法人という法人の性質上、地域のニーズに即した保育サービスを提供することが求められます。地域との連携が重要であり、地域の信頼を得ることができます。

賞与額の安定性
福祉事業としての性格が強いため、一般的に賞与額の安定性があります。安定した収入を得ることができ、生活の安定につながります。

株式会社の特徴とメリット

福利厚生の充実
株式会社は、保育施設の運営以外にもさまざまな事業を行っているところがほとんどです。そのため、社歴やその事業を活かした福利厚生が充実していることが多いです。保育士のための制度やサポートが整っており、働きやすい環境が整っています。

転居や異動の柔軟性
株式会社では、営利目的で設立されているため、特定の地域に限定された事業として考える社会福祉法人に比べると、転居や異動の機会が多いです。異なる保育園や施設での経験を積むことができ、キャリアの幅が広がります。

若い先生の多さ
社会福祉法人に比べると後発の保育参入企業になるため、若い先生が多く、新しいアイデアや刺激を受けることができます。若手同士で意見交換や情報共有が活発に行われ、成長しやすい環境です。

キャリアの幅
株式会社では、様々な施設やプロジェクトでの経験を積むことができます。保育園だけでなく、企業内の研修やキャリア支援制度を活用して、他の事業への参画も含めた、自身のキャリアを広げることができます。

労働環境の比較

勤務時間
社会福祉法人は、地域の需要に応じて変動する場合がありますが、比較的定時制が多い傾向があります。一方、株式会社では、業務内容や施設によって異なりますが、残業や夜間勤務の可能性があります。

休暇制度
社会福祉法人は、福利厚生が整っており、有給休暇や特別休暇などの休暇制度が充実しています。一方、株式会社も福利厚生が整っていますが、休暇制度はあくまでも運営企業の裁量によって決まるため、確認が必要になります。

福利厚生
社会福祉法人は、保育手当や住宅手当などの各種手当が支給されることがあります。株式会社は休暇制度と同様に内容は企業によって異なります。ただ、人材不足の業界であるため、休みや手当だけでなく、教育プログラムやレクリエーションなど、各企業自社の特性を打ち出せる福利厚生を始めている企業も多くなってきています。

職場の雰囲気
社会福祉法人は、アットホームな雰囲気が多く、地域に根付いた運営が特徴であり、地域の信頼を得るために地域住民とのコミュニケーションが重要です。株式会社は会社の特性上、ビジネスライクな側面が強いようですが、チームワークを重視する企業が多く、キャリアアップを求める方も多いなど、職場の雰囲気は活気に満ちています。

給与の違い
社会福祉法人と株式会社の給与水準は、一概には言えませんが、一般的には社会福祉法人の方が給与は若干低めに感じることがあるようですが、賞与も含めて安定している傾向があります。一方で株式会社の福利厚生やボーナスなどを考慮すると、実質的な収入は企業によって異なります。

メリットとデメリットのまとめ

社会福祉法人は、地域に根付いた運営や安定した給与が魅力ですが、勤務時間やキャリアの幅はやや限られることがあります。一方、株式会社は福利厚生やキャリアの幅が広がる反面、勤務時間や転勤の可能性が高いです。

どちらが自分に合っているかを判断するためには、自身のライフスタイルやキャリアの目標、地域や職場の雰囲気などを考慮して、運営法人を選ぶことが重要です。安定した給与や地域とのつながりを重視する場合は社会福祉法人、キャリアの幅や柔軟性を求める場合は株式会社が適しているかもしれません。

まとめ

保育士として働く際に、運営法人の選択は非常に重要です。運営法人にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴やメリットが異なります。社会福祉法人や株式会社など、様々な種類がありますが、福利厚生や労働環境、給与水準、自分のライフスタイルやキャリアの目標に合った法人を選ぶことが大切です。しっかりと比較検討し、自分に合った運営法人を見つけましょう。