問題提起
保育士と幼稚園教諭のどちらのキャリアを選ぶべきか迷っていませんか?資格取得方法や仕事内容、給与、労働環境の違いを理解することは、適切な進路選択に不可欠です。
記事を読んでわかること
この記事では、保育士資格と幼稚園教諭免許の違いを明確に解説します。各職種の役割や労働環境、キャリアパス、給与比較など、多角的な視点から両者を比較し、あなたに最適な選択肢を見つける手助けをします。
記事を読むメリット
この記事を読むことで、保育士と幼稚園教諭の違いを理解し、将来のキャリア選択に必要な情報を得ることができます。自分の適性に合った職業を見つけるための具体的な指針が得られ、より充実した職業生活を送るための第一歩を踏み出せます。
保育士資格と幼稚園教諭免許の違い
保育士と幼稚園教諭は、子どもと関わる仕事であるものの、必要な資格と制度に違いがあります。まずはそれぞれの資格についてみていきましょう。
保育士資格
保育士資格は、厚生労働省が管轄しており、主に福祉の観点から子どもの保育を行います。保育士資格の取得には、福祉に関する広範な知識と実務経験が求められます。養成施設(大学、短期大学、専門学校など)を卒業するか、国家試験に合格することで取得できます。養成施設では、児童福祉法に基づいた必要単位を取得します。また国家試験受験には、一定の実務経験や学歴が必要です。実際の仕事は、保育士養成課程で学ぶ専門知識と技能が求められます。
幼稚園教諭免許
一方、幼稚園教諭免許は文部科学省が管轄し、教育の観点から幼児の発達を促進する役割を担います。教育学や心理学など、教育に関する専門的な知識が必要です。大学や短期大学で教職課程を履修して取得します。幼稚園教諭免許は10年ごとに更新が必要で、所定の講習を受けることが義務付けられています。
保育士と幼稚園教諭の基本的な役割と仕事内容
保育士の役割
保育士は、子どもたちが安全に、そして健やかに過ごせるように生活全般の援助を行います。0歳から小学校入学前までの乳幼児を対象に、長時間子どもたちの生活全般をサポートします。具体的には食事や排泄、睡眠などの日常生活を支援し、基本的な生活習慣や社会性を身につけるための指導を行います。保護者が仕事などで不在の間、保育士は家庭に代わる存在として、子どもたちの心身の発達をサポートします。また、ただ子どもたちのサポートをするだけでなく、一日のスケジュールを管理し、保護者との連携も密に行います。特に小さな子どもたちの情緒面のケアも重要な業務です。
幼稚園教諭の役割
幼稚園教諭は、主に3歳から小学校入学前の幼児を対象に、朝から午後にかけて教育活動を行います。幼稚園では、子どもたちの社会性や学びの基礎を育むためのカリキュラムが組まれています。幼稚園教諭は、遊びを通じて子どもたちに学びの楽しさを伝え、知識や技能の向上、社会性の育成や、自立心・協調性を育む役割を担っています。そのため幼稚園教諭は授業の計画や実施、イベントの準備などが主な業務で、保育時間は比較的短く設定されています。また、子どもたちが帰宅した後は、翌日の準備や会議などを行います。
保育士と幼稚園教諭の労働環境と職場
給与水準について
保育士と幼稚園教諭の給与は、さまざまなデータがあるため、ここでは政府統計ポータルサイトe-Statの「令和5年賃金構造基本統計調査」を基にご紹介します。
保育士
平均年齢 38.0歳
勤続年数 8.5年
支給給与額(手当等含む) 271,400円
幼稚園教員・保育教諭
平均年齢 38.3歳
勤続年数 9.9年
支給給与額(手当等含む) 272,300円
このように大きな差はありませんが、実際は職場や地域によって違いがあったり、経験年数を重要視する傾向にある業界のため、初任給の観点で見ると、こちらより金額は低くなります。また公立の施設で働く場合は、保育士も幼稚園教諭も地方公務員として安定した給与と待遇が提供されます。私立の施設では、給与や待遇が施設によって大きく異なる場合があります。公立の方が一般的に待遇が安定しているため、競争率も高くなりがちです。
職場と労働時間の違い
保育士
保育士の主な職場は保育園ですが、乳児院や児童養護施設、障がい児施設など、さまざまな児童福祉施設でも活躍できます。また認定こども園で3歳未満の園児を担当する場合は、保育士の資格が必要となります(幼保連携については後述します)。子どもたちの日常生活を支える役割を担うため、職場によって必要とされるスキルや知識が異なります。保育士の労働時間は、早朝から夜までの長時間勤務が一般的です。
幼稚園教諭
幼稚園教諭の職場は、主に幼稚園です。幼稚園は、文部科学省の指導のもと、教育カリキュラムを実施する場であり、子どもたちの教育と発達を支援します。幼稚園教諭は教育者として、学びの基礎を築くための活動を計画し、実行します。幼稚園は朝から午後までのお預かり時間が多く、保育時間としては短めですが、学習計画や実施、イベントの準備など付随業務が多岐に渡ります。
メリットとデメリットの比較
保育士のメリット・デメリット
保育士は0歳から就学開始までの幅広い年齢の子どもを見ることができるため、子どもの成長を身近で感じられることがやりがいに感じられることでしょう。また保育所等は年々増加傾向にあり、こども家庭庁の「保育所等関連状況取りまとめ(令和5年4月1日)」によると令和5年時点において、保育所等は39,589施設あり、就職先が多岐にわたり、幅広い選択肢があることが保育士のメリットと言えます。しかし、一般的に長時間労働が多く、体力的な負担が大きい点がデメリットです。
幼稚園教諭のメリット・デメリット
幼稚園教諭のメリットは、教育活動に専念できることです。また保育時間が比較的短いため、プライベートな時間を持ちやすいという利点もあります。一方で、教育活動の準備に追われることが多く、精神的なプレッシャーもあります。さらに幼稚園は年々減少傾向にあり、文部科学省の「令和5年度学校基本統計(学校基本調査の結果)」によると令和5年度の幼稚園数は8,837施設で前年度より274施設減少している点にあります。幼稚園教諭は幼稚園以外の職場が少なく、就職先が限定されている点はデメリットと言えるかもしれません。
両方の資格を取得するススメ
保育士・幼稚園教諭はどちらも子どもに関わる仕事をするために必須のものであり、できればどちらも持っておきたいと思う方も多いかもしれません。
ご存知の方も多いかと思いますが、2025年3月までの限定で、保育士と幼稚園教諭の両方の資格を同時に取得できる制度があります。それが「幼保特例制度」です。この制度は一定の実務経験を持つ保育士または幼稚園教諭が、取得していない方の取得にかかる単位等を一定数免除する特例制度になります。この背景としては認定こども園制度の実施に際して、幼保連携型であれば両方の資格を持っている事が必要となり、その他の形態でも両資格を保持していることが望ましいとされている現状の対応策として打ち出された制度となっています。この制度を利用することで、キャリアの幅を広げることができます。是非検討してみてください。
まとめ
保育士と幼稚園教諭のどちらを選ぶべきかを考える時、自分の興味や適性に基づいて選ぶことが大切です。子どもの生活全般をサポートしたい場合は保育士、教育活動に力を入れたい場合は幼稚園教諭が適しています。またどちらか一方の資格を有している方は是非「幼保特例制度」の活用を考えて頂きたいと思います。今後、教育・保育の重要性はますます高まると予想されます。どちらの職業も社会に貢献できる重要な役割を果たしており、適切な資格と経験を持った人材が求められています。これからのキャリア選択の参考にしていただければ幸いです。