問題提起:
日本の少子化や子どもの貧困、教育格差、虐待・いじめ、そしてデジタル格差など、子育てに関する課題は深刻化しています。こどもたちが安心して成長できる社会を築くために、新たなアプローチが求められています。
記事を読んでわかること:
「こどもまんなか社会」とは、子どもを中心に据え、その幸福を最優先に考え、社会全体で子育てを支援することを目指す概念です。少子化や貧困、教育格差などの問題を解決するための具体的な取り組みや提案が紹介されています。
記事を読むメリット:
この記事を読むことで、少子化対策や子育て支援についての理解が深まります。また、実際の取り組みや海外事例を知ることで、個々の行動や地域社会での貢献の重要性が明確になり、日常生活での具体的なアクションへの参加意欲が高まるでしょう。
定義と重要性
「こどもまんなか社会」とは、子どもを社会の中心に据え、子どもたちが健やかに成長し、安心して生活できる環境を整える社会のことを指します。この考え方は、子どもたちの権利や幸福を最優先に考え、将来の夢を追いかけることができる社会づくりを目指しています。特に、少子化や育児環境の改善が求められる現代日本において、非常に重要なコンセプトです。
こどもまんなか社会の背景
少子化
日本では少子化が深刻な問題となっており、子育て環境の改善が急務です。例えば、こども家庭庁の「令和4年度 少子化の状況及び少子化への対処施策の概況」によると、2022年の合計特殊出生率は1.26と低く、希望出生率の1.8には達していません。ちなみに希望出生率とは「結婚したい」「子どもを持ちたい」と願うすべての人の希望がかなった時に実現する、政府が想定した出生率になります。また人口を維持するためには、合計特殊出生率がおおむね2.07を保つ必要があると言われています。
現在の日本では2020年時点で、男性の約3.5人に1人、女性の約5.6人に1人が、50歳時に未婚であるとの調査結果が出ており、結婚している家庭においても、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」「これ以上、育児の心理的、肉体的負担に耐えられない」「自分の仕事に差し支える」「家が狭い」などの理由から、出産を望まない、或いは第2子以降を望まない家庭が増えていると言われています。このように、経済的な負担や育児支援の不足など、様々な要因が影響し、日本の少子化が進んでしまっています。
貧困
子どもの貧困は、日本社会の大きな課題です。経済的な困難に直面する子どもたちが、適切な教育や健康な生活を送ることが難しくなっています。国民生活基礎調査によると、相対的に貧困の状態にあるこどもの割合は11.5%となっており、さらにひとり親世帯の貧困率は 44.5%と高い水準となっています。
教育格差
教育格差とは、生まれ育った環境で受けられる教育に格差が生じることを指しています。例えば生活に困窮している家庭に生まれた場合、学校で良い成績を出し続けたとしても、進学に伴う様々な費用を払えないがために、進学を諦めてしまうケースなどが該当します。また地方と都市部で教育環境に差が生じることもあります。教育の機会均等を実現するためには、このような家庭による格差や、地域ごとの教育質の格差を解消する必要があります。
虐待・いじめ
子どもたちが虐待やいじめに遭うことは、心身の健康に深刻な影響を及ぼします。厚生労働省「福祉行政報告例」によると、2021年度における児童相談所の児童虐待相談対応件数は、207,660件と約2分半に1件の相談がある状況となっています。また文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2022年度のいじめの重大事態の発生件数は、923件となっています。こうした問題の防止と早期対応を強化するために、学校や保護者、地域社会が連携して取り組むことが必要です。
デジタル格差
デジタル格差とは情報通信技術(IT)の恩恵を受けることのできる人とできない人の間に生じる経済格差で、特にインターネットの普及により生じています。例えば生まれ育った環境が貧困だった場合や、日本ではあまり考えられないかもしれませんが、地理的に条件の不利な過疎地や離島である場合、質の低い情報を切り分けて、正しい情報を見極める情報リテラシーがない場合にも生じる可能性があります。この格差を解消するために、子どもたちに適切なデジタルリテラシーを教えるためも、家庭によるデジタルリテラシーを高め、情報の信頼性を判断するスキルやセキュリティ意識を高めることが大切です。
具体的な取り組み
DXで「こどもまんなか」プロジェクト
デジタル技術を活用した子育て支援が注目されています。例えば、子育て世帯の負担軽減や利便性向上を目指し、オンライン上で子どもに関する行政手続きや経済支援を完結できるシステム整備を進めています。具体的には愛媛県西条市において「こどもDX」プロジェクトが進行中で、デジタルツールを活用して出生手続きを簡素化し、育児支援の効率化を図っています。
こどもまんなか応援サポーター
こども家庭庁が推進する取り組みで、子どもたちの最善の利益を考え、自らもアクションに取り組む個人や企業、団体、自治体が対象です。SNSで発信することで応援サポーターを表明できます。また自治体や企業も独自に子育て支援を行っています。例えば、Jリーグでは、スタジアムを活用した親子イベントや、児童養護施設の子どもたちを対象にしたサッカー教室などを実施しています。
こどもまんなかアクション公式LINE
こども家庭庁の子育てを応援する情報を提供する公式LINEアカウントです。こどもまんなかアクション、こども未来戦略、こどもまんなか応援サポーター、こどもまんなかアクションリレーシンポジウムなどについて確認でき、広報活動に利用されています。このプラットフォームを利用することで、保護者は必要な情報やサポートを迅速に得ることができます。
こどもまんなか社会の実現に向けた提案
教育現場の役割
教育現場では、学校や保育者が子どもたちの成長を支えるための重要な役割を果たしています。例えば、教員が一丸となって教育の質を向上させるための取り組みや、子どもの安全を守るための対策が進められています。もちろんこれは学校教育のみならず、保育所や幼稚園、認定こども園などの未就学児の現場でも同じことが言えます。
企業の参画
企業もまた、子育て支援に積極的に関わるべきです。多くの企業が育児休業制度を整備し、働く親を支援する取り組みを行っています。また、地域社会と連携して、子どもたちにとってより良い環境を提供するためのプロジェクトにも参画しています。働く保護者の環境の改善がこどもの環境改善につながります。
海外事例の活用
諸外国の実例を参考に新たな手段を考えるのも有効です。例えば北欧諸国では、充実した育児休業制度や、社会全体で子育てを支援する文化が根付いており、これが出生率向上に貢献しています。また子育て支援におけるデジタル化の推進が、親の負担軽減に大きく寄与するとの意見もあります。
まとめ
今回は「こどもまんなか社会」の定義や背景、具体的な取り組み、専門家の意見、そして将来の展望について詳しく説明しました。この考えに基づき、子どもたちの幸福を最優先に考え、社会全体で子育てを支援することの重要性を強調しました。今後の課題として、政府や自治体による経済的支援の拡充や、教育の質向上、地域社会の連携強化が挙げられます。また、社会全体でのデジタル技術の活用による効率的な育児支援の普及も重要です。一方で我々は政府や自治体の動きをただ待っているのではなく、日常生活で実践できる具体的なアクションとして、地域の子育て支援活動への参加や、育児休業制度の活用、また、子育て支援に関する情報を積極的に収集し、周囲の親たちと共有することも重要になると思います。