問題提起:
保育士の離職率が高い背景には、賃金やキャリアアップの機会不足があります。この問題が保育の質に悪影響を及ぼし、保育士不足という深刻な社会問題につながっています。

記事を読んでわかること:
本記事では、専門リーダーの役割や重要性、メリットについて詳しく解説します。また、副主任保育士との違いや専門リーダーになるための条件、必要なスキルアップ方法も紹介します。

記事を読むメリット:
この記事を読むことで、専門リーダーとしてのキャリアパスや保育士としての成長の可能性を知ることができます。専門リーダーを目指すことで、保育士としてのモチベーションを高め、より質の高い保育を提供できるようになるでしょう。

はじめに

保育士のキャリアアップの重要性

保育士の仕事は、子どもたちの成長と発達に大きな影響を与える重要な役割を果たしています。しかし、賃金や待遇の面で課題が多く、キャリアアップの機会が限られていることから、保育士の離職率が高いことが問題視されています。キャリアアップの仕組みを導入することで、保育士のモチベーションを高め、長期的な雇用を促進することが重要です。

保育士の専門リーダーとは何か?

専門リーダーは、2017年4月に政府が打ち出した「処遇改善等加算Ⅱ」によって、保育士のキャリアアップの一環として新設された役職であり、特定の分野における専門知識と技術を持ち、保育現場での指導や助言を行う役割を担います。専門リーダーの設立背景には、保育士の賃金改善や離職防止、そして保育の質向上が挙げられます​。

専門リーダーとは?

役割と重要性

専門リーダーは、特定の専門分野においてリーダーシップを発揮し、他の保育士の模範となる役割を持ちます。具体的には、乳児保育、幼児教育、障がい児保育、食育・アレルギー、保健衛生・安全対策、保護者支援・子育て支援、マネジメントなどの分野における研修を受けたのち、その専門知識を活用し、保育の質を向上させます。

専門リーダーの具体的な役割と責任

専門リーダーは、日常の保育業務に加えて、他の保育士に対する指導や助言、研修の企画・実施などを行います。また、保育計画の作成や保育の質の評価、保護者との連携強化など、幅広い業務を担います。

副主任保育士との違い

副主任保育士との相違点

副主任保育士も専門リーダー同様、政府が打ち出した「処遇改善等加算Ⅱ」によって、は、主任保育士のサポートを主な新設された役職となります。どちらの概ね7年以上の実務経験とキャリアアップ研修を終了することで就任することができる役職である点は同じです。違いとしてはその役割として、副主任保育士が、主任保育士のサポートを主な役割とし、保育園全体の運営や保育現場の指揮を担当する一方、専門リーダーは特定の分野における専門知識を持ち、その分野での保育の質向上に特化した役割を担う点にあります。

副主任保育士と専門リーダーの職務の比較

副主任保育士は園全体の運営支援を行い、広範な業務を担当します。専門リーダーは特定の専門分野にフォーカスし、その分野での研修や指導を通じて保育士全体のスキルアップを図ります​。キャリアアップ研修の実施内容からも、副主任保育士はマネジメントが必須となっているのに対し、専門リーダーはマネジメント研修が必須ではないものの、副主任保育士よりも1つ多い専門研修を終了する必要があるところから、その後の職務の違いが見て取れます。双方が協力し、それぞれの役割を果たすことで保育園全体の質を高めることができます​。

専門リーダーになるための条件

専門リーダーになるための要件

専門リーダーになるためには、一定の経験年数と所定の研修を修了する必要があります。以下がその要件になります。

  •  経験年数概ね7年以上
  •  職務分野別リーダーを経験
  • 4つ以上のキャリアアップ研修(専門研修)を修了(2024年現在)
  • 専門リーダーとしての発令

キャリアアップ研修の詳細と重要性

キャリアアップ研修は、保育士が専門知識を深め、リーダーシップを発揮するための重要なステップです。この研修を通じて、保育士は最新の知識や技術を習得し、保育の質を高めることが期待されます​。以下が具体的な研修内容になります。

【専門研修】
①乳児保育
②幼児教育
③障害児保育
④食育・アレルギー
⑤保健衛生・安全対策
⑥保護者支援・子育て支援
【マネジメント研修】
【保育実践研修】

それぞれ15時間以上の研修を受講することで、終了証を交付してもらう事ができます。

前述した副主任保育士との違いとしては、副主任保育士はマネジメント研修が必須ではありますが、その他は3つの分野の受講でよい(2024年現在)のに比べ、専門リーダーはマネジメント研修が必須ではない代わりに、4つの分野の受講が必要となる点にあります。​

専門リーダーの業務内容

専門性とリーダーシップ

専門リーダーは、特定分野のスペシャリストとして、日常業務においてリーダーシップを発揮します。具体的には、他の保育士への指導や助言、保育計画の作成、保育の質の評価などを行います。

保育現場での専門リーダーの具体的な業務内容

専門リーダーは、日常の保育業務に加えて、研修の企画・実施、保護者との連携強化、保育の質の評価と改善提案など、多岐にわたる業務を担当します​。

日常業務におけるリーダーシップの発揮方法

専門リーダーは、他の保育士と協力しながら、保育の質を向上させるためのリーダーシップを発揮します。具体的には、他の保育士への指導や助言、保育計画の作成、保護者との連携強化などが含まれます。

専門リーダーのメリット

処遇改善とキャリアアップ

専門リーダーには、処遇改善等加算Ⅱが適用され、月額最大4万円の手当が支給されます。これにより、保育士の賃金が改善され、離職防止に寄与します。保育士は給与が安い事が離職の原因だったり、復職を望まない潜在保育士の増加の原因の一つとなっていましたが、この制度により、一定の改善が見込まれることになりますです。

キャリアアップが保育士のモチベーション向上に与える影響

数年前までの保育士のキャリアアップは主任保育士になり、園長を目指す、以外のキャリアアップがなく、数に限りもある事が離職率や潜在保育士の増加につながっていました。しかし、このようにキャリアアップの機会が増えることで、保育士は長期的なキャリアパスを描きやすくなり、仕事へのモチベーションが高まります。これにより、保育士の離職率が低下し、保育の質が向上します。

専門リーダーの課題と解決策

役職の人数制限と導入課題

専門リーダーの役職には人数制限があり、すべての保育士がこの役職に就くことはできません。こども家庭庁の「公定価格の処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲ の一本化について」によると

<例>標準規模の保育園(定員90人)の職員数
園長1人
主任保育士1人
保育士12人
調理員等3人
合計17人

とした場合、副主任保育士と専門リーダーを併せて、園長・主任保育士を除く保育士等全体の概ね1/3、つまり5名が基本的な上限となります。

前述した通り、従前の状況に比べると保育士のキャリアアップの可能性は増えていますが、保育園全体のバランスを保つため、役職の数が限られていることは多く、キャリアアップの機会が制約される可能性があります。

保育園における専門リーダーの人数制限とその影響

専門リーダーの人数制限により、優れた保育士がこの役職に就けない場合があります。これにより、保育士のモチベーションが低下するリスクがあります。

導入していない保育園の課題とその理由

一部の保育園では、処遇改善等加算Ⅱを導入していない場合があります。この理由としては、手続きの煩雑さや費用の問題が考えられます。これにより、保育士の処遇改善が進まないケースもあります。手続きに煩雑さを感じる場合は外部リソースの利用も視野に入れ、導入を検討すべきでしょう。

専門リーダーとしてのスキルアップ方法

必要なスキルと能力

専門リーダーとして活躍するためには専門研修で得た知識だけでなく、以下のようなスキルも重要です。

モチベーション管理
チーム全体の士気を高め、保育士が自信を持って働ける環境を作る力​

見通しを持つ力
業務の優先順位をつけ、スケジュールを効率的に管理する能力

共感力
保育士や保護者の立場に立って考え、問題解決に導く力​

スキルアップのための具体的な方法

専門リーダーとして前述したようなスキルを磨くためには、定期的な研修への参加が有効的です。以下に具体的な方法とプログラムを紹介します。

ワークショップとセミナー
専門分野に特化したワークショップやセミナーに参加し、実践的なスキルを身に付けることは有効です。積極的に参加をしてみてください。時には保育士専用のセミナーではないものを受講するのも新しい刺激を得られる良い機会になるかもしれません。

自己学習と勉強会
書籍やオンラインコースを活用し、継続的に学び続けることは、研修を受けることに比べ、時間的制約に囚われず、自由な時にできるという利便性があります。また、保育士同士で勉強会を開催し、情報を共有する、アウトプットを意識した活動を行う事で、自身のスキルとしてもより一層定着をするでしょう

まとめ

今回の記事では、専門リーダーに関する具体的な情報とその重要性について詳しく解説しました。保育士としてのキャリアを充実させるために、専門リーダーを目指すことは非常に有益な選択肢となります。今後、専門リーダー制度がさらに普及し、保育士のキャリアパスが多様化することが期待されます。また、専門リーダーとしての経験を積むことで、さらなるキャリアアップの道が開かれ、主任保育士や園長への道も見えてくるかと思います。各種研修や自己学習を通じてスキルを磨き、保育の質を向上させ、保育園さらには社会全体に貢献しましょう。