問題提起:
保育園で子どもたちの健康を守るためには、どのような衛生管理が必要かご存じでしょうか?感染症リスクを低減し、安全な環境を維持するための具体的な手順を理解していますか?

記事を読んでわかること:
この記事では、保育園での衛生管理計画と衛生管理マニュアルの作成手順について詳しく説明します。衛生管理に関する基本的な考え方、具体的な手順、そして実際の現場での実施方法を紹介します。

記事を読むメリット:
この記事を読むことで、保育園における効果的な衛生管理方法を学び、具体的な手順を実践できるようになります。これにより、感染症の予防や拡散防止に役立ち、子どもたちの健康と保護者の信頼を確保することができます。

はじめに

保育園は、幼い子どもたちが集まる場所であり、彼らの健康と安全を守るためには衛生管理が極めて重要です。子どもたちは免疫力が大人ほど強くなく、感染症にかかりやすいため、適切な衛生管理を行うことで病気の予防や拡散を防ぎます。また、保育園は親から信頼される場所であるべきですので、衛生管理がしっかりしていることは保護者の安心にも繋がります。

衛生管理に関する法律とガイドラインの背景

法律とガイドライン

日本では、保育園の衛生管理に関して複数の法律やガイドラインが存在します。例えば、「児童福祉法」や「感染症予防法」に基づき、保育園は適切な衛生管理を実施することが求められています。また、厚生労働省や各自治体からもガイドラインが発行されており、これらに従って衛生管理計画を策定することが推奨されています。その中の一つとして、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が含まれています。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」と「HACCPに基づく衛生管理」は似たような言葉ですが、若干内容に違いがあります。

「HACCPに基づく衛生管理」とはHACCPの7原則に基づき、食品等事業者が使用する原材料や製造方法等に応じ、計画を作成し、管理を行う衛生管理の事を指します。

一方、「HACCPに基づく衛生管理」とはHACCPをそのまま実施することが困難である小規模事業者等(保育園などを含む、営業以外の集団給食の提供を行う施設などもこの中に含まれます)について求められる衛生管理の事を指します。「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」は、取り扱う食品の特性に応じた衛生管理の内容を業界団体が作成し、厚生労働省がその内容を確認した、手引書の内容を実施することで対応が可能となります。

衛生管理計画と衛生管理マニュアルの違い

衛生管理計画

衛生管理計画は、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理で必要になる文書です。これには、HACCPで管理する重要管理項目と、従来の一般衛生管理で管理する項目を記載します。重要管理項目は、その事業所でこの工程を確実に管理すれば、食品安全上の問題が生じなくなるように決められます。

衛生管理マニュアル

一方で、衛生管理マニュアルは、具体的な清掃・洗浄・消毒や食品の取扱い等についての方法を定めた手順書です。これは、衛生管理計画に基づいて作成され、従業員に周知徹底を図るためのものです。

違いと目的

簡単に言うと、衛生管理計画は「何を管理するか」を定めた計画書であり、保育園内で衛生を確保するための具体的な行動計画を示すものです。一方衛生管理マニュアルは「どのように管理するか」を具体的に記した手順書であり、衛生管理計画を実行するための具体的な手順やルールを記載した文書です。どちらもHACCPの考え方に基づいており、食品の安全を確保するために重要な役割を果たします。これらは、日常の衛生管理を徹底し、緊急時にも迅速かつ適切に対応するために必要です。

衛生管理計画の作成手順

現状分析

園内の衛生状態の現状把握
まず、現在の保育園内の衛生状態を把握することが重要です。これには、トイレや手洗い場の清掃状況、消毒の頻度、食品管理の状態などをチェックします。もちろん給食を作る給食室での食材管理状況や衛生状況、調理基準なども含まれます。現状の写真を撮り、記録として残すことも有効です。

過去の問題点の洗い出し
過去に発生した衛生問題を洗い出し、その原因を分析します。例えば、インフルエンザの集団感染があった場合、その時の対応が適切であったか、どのような改善点があるかを確認します。

目標設定

衛生管理の具体的な目標設定
次に、衛生管理の具体的な目標を設定します。これは現状分析で洗い出した危害要因(ハザード)を、それに対応する重要管理点として目標として据え置くと効果的です。例えば、「手洗いの徹底」「トイレの1日3回の消毒」「食品の安全管理」など、明確で測定可能な目標を掲げることが重要です。

計画策定

必要な資源や設備の確認
衛生管理を実施するために必要な資源や設備を確認します。例えば、消毒液や清掃道具、手洗い場の石鹸などが十分にあるか、必要なものは何かをリストアップします。

スケジュールの設定
衛生管理のスケジュールを設定します。このスケジュールは一日のタイムスケジュールに組み込まれるような、日常的な清掃や消毒の時間はもちろん、月間計画や年間計画に組み込まれるような、定期的な衛生チェックのタイミング、職員の研修スケジュールなど、具体的に計画します。

実行と評価

計画の実行と記録
計画を実行し、できていることを確認、記録します。記録は正確に衛生管理が行われている証拠として保管することが必要です。

職員への教育と訓練
職員に対して定期的な衛生管理の教育や訓練を行います。新しいガイドラインや感染症の情報を共有し、実際の業務に活かせるようにします。

評価と改善

定期的な見直しと改善
計画を実行し、記録されたものを確認しながら、定期的にその効果を評価します。問題が発生したかの有無のみならず、実行に無理がないか、事故の予防に十分な効果を発揮しているかも重要な点です。また問題点が見つかった場合は、速やかに原因を追究し、改善策を講じます。

衛生管理マニュアルの内容

基本方針

保育園の衛生管理に関する基本的な考え方
保育園全体の衛生管理に関する基本的な方針を明確にします。例えば、「子どもの健康を最優先に考える」「全員が衛生管理の重要性を理解し実践する」といった理念を掲げます。

具体的な手順

手洗い、消毒、清掃の具体的手順
手洗いの方法や消毒の手順、各エリアの清掃方法を具体的に記載します。例えば、手洗いは流水で20秒以上行うこと、消毒はアルコール消毒液を使用することなどです。職員が遵守することはもちろん、子どもたちにどのように伝え、実践させるかも具体的に記載するとよりわかりやすいでしょう。

食品衛生管理の手順
調理現場での食品の取り扱い方法や保存方法、調理器具の消毒方法など、食品衛生に関する手順を詳細に説明します。

感染症対策

感染症の予防と発生時の対応
感染症の予防策(例:定期的な手洗い、マスクの着用)や、感染症が発生した場合の対応方法(例:保護者への連絡、感染者の隔離)を明記します。

緊急時の対応

緊急事態における対応マニュアル
地震や火災、重大な感染症の発生時など、緊急事態における対応手順を具体的に記載します。ここはBCPとも関連が出てくるところになりますので、双方で矛盾のないような内容にすることも重要です。

職員の役割と責任

役割分担と責任範囲
各職員の役割や責任範囲を明確にします。例えば、消毒担当者、食品管理担当者など、具体的な役割分担を決めます。役割を決めることで責任の所在が明確になり、より責任感をもって衛生管理に取り組むことが期待されます。

まとめ

今回は衛生管理について、計画とマニュアルの違いから具体的な作成手順や盛り込むべき内容について確認してきました。衛生管理は一度策定して終わりではなく、継続的な見直しと改善が必要です。定期的な評価とフィードバックを行い、常に最適な状態を維持することが重要です。また保育園の衛生管理は保護者の協力も不可欠です。家庭でも衛生管理を徹底するよう呼びかけ、保育園と保護者が一体となって子どもの健康を守りましょう。

以上の内容を踏まえて、それぞれの施設にあった、具体的かつ詳細な衛生管理計画とマニュアルを作成し、実践をしてみて下さい。