問題提起:
保育園の運営は、少子化や物価高の影響により厳しい状況が続いています。経費削減を図る一方で、保育の質を落とさない方法を見つけることが重要です。
記事を読んでわかること:
この記事では、保育園経営における主要な経費項目とその内訳、具体的な経費削減施策、そして保育の質を維持しながらコストカットを実現するための秘訣について解説します。
記事を読むメリット:
この記事を読むことで、保育園経営者や管理者は、実践的な経費削減の方法を学び、限られた予算内で保育の質を向上させるための具体的なアイデアを得ることができます。
はじめに
保育園の運営には多額の経費がかかりますが、少子化や政府補助金の減少などにより、経営環境は厳しさを増しています。経費削減は、経営の健全化や保育の質向上に直結する重要な施策です。
なぜ保育園の経費削減が重要なのか?
経費削減を実施することにより、以下のようなメリットが得られると考えられます。
収益改善
無駄な経費を削減することで、収益を改善し、将来の投資や緊急時の対応に備えることができます。特に保育園においては、保育料と補助金の2つが主要な収入源になるため、一般企業と比べて収入見込みが劇的に改善されることは難しいと言わざる負えません。その中で経費を減らすことで、収益の改善に大きく寄与することが期待できます。
保育の質向上
無駄なものは省き、教育資源や施設の改善などの必要なものには惜しみなく投資をするという考えを持つことで、限られた予算を効果的に使うことができ、結果として保育の質を向上させることができます。
施設の安定化
経費は基本的に資金の流出に直結します。短期的に利益が出ていたとしても、将来的に施設の改修など大きな支出が伴う事があります。日常的な経費削減によって経営が安定し、長期的な視野で保育園を運営することが可能になります。
保育園の主要な経費項目とその内訳
保育園の運営にかかる経費は多岐にわたります。以下に主要な経費項目とその内訳を詳しく解説します。
人件費
- 職員給与:保育園の運営において最も重要な職員です。給与、福利厚生、通勤交通費、会社によっては賞与などが必要になります。
- 社会保険料:健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険など、職員を雇用する上で最低限かかる保険料があります。これは一定時間以上勤務するパートスタッフも対象になります。
- 教育研修費:新任保育士にはしっかりした教育費用をかける必要があります。OJTによる教育ももちろん有効ですが、外部研修や本の購入なども検討が必要です。
- 採用費用:職員募集にかかる広告費用です。求人サイトやエージェントの利用、新聞広告など、媒体によって費用が異なります。
物品費
- 食費:子どもたちの給食やおやつにかかる費用です。新鮮で栄養バランスの取れた食材の確保が必要です。
- 消耗品:事務用品、ティッシュペーパー、掃除用品などの日常的に使用する消耗品です。頻繁に購入するため、コストがかさむことがあります。
- 教材:教育活動に使用する教材や玩具です。学年ごとに異なる教材が必要となることが多いです。
光熱費
- 電気:照明、空調、調理に使用される電気です。エネルギー効率の良い設備を導入することで削減が可能です。
- ガス:調理や暖房に使用されるガスです。ガス機器の効率化や使用量の見直しが求められます。
- 水道:給水や清掃に使用される水道です。節水対策を講じることでコストを削減できます。
その他
- 広報活動:園の認知度向上のための広報活動です。地域イベントへの参加やSNSの活用などがあります。
- 保険料:万が一に備えて施設の保険加入が必要です。定期的に適切な保険契約を見直すことが重要です。
- 修繕費:施設や設備の修繕にかかる費用です。定期的なメンテナンスを行うことで、突発的な修繕費用を抑えることができます。
経費削減のための具体的な対策
人件費の削減施策
職員は保育園運営にとっては最重要なものであり、それに伴って生じる人件費は避けては通れない費用になります。原則的にこの費用を削減対象と考えるのはあまり望ましい事ではないですが、例えば職員のシフトを見直し、パート職員をピーク時にのみ効率的に配置することで、正社員を雇用する場合に比べて、無駄な人員配置を避けることができます。また適正な人事評価制度を導入する事で、職員のモチベーションを高めながら、単純な定期昇給による客観性のない人件費増加を抑えることもできます。
一方で社員であってもパート社員でも採用に当たっては求人媒体での募集、雇用に当たっては給与・社会保険料・通勤交通費と健康診断や教育研修費用などのさまざまな費用が掛かる事が事実です。その点も踏まえて業務委託による、一部外部への業務切り出しも有効であると言えます。どのようなものが委託可能かを併せて検討する事も有効でしょう。
施設運営に費用の削減施策
施設運営には様々な費用が掛かります。これらも必要な費用になりますので、無くす事はできないものですが、以下のような施策で削減は可能です。
- 食材の共同購入:他の保育園と共同で食材を購入し、大量購入による割引を利用してコストを削減します。大規模に何園も展開している施設でない場合は、例えば、地域の保育園が連携して食材を一括購入するなどを検討してみるのも良いかもしれません。
- 消耗品のまとめ買い:大量購入による割引を利用し、消耗品のコストを抑えます。例えば、1ヶ月分の消耗品を一度に購入するなどです。注意点としては過剰在庫にならないように、適切な数量を見極めることです。
- リサイクルの推進:リサイクル可能なものを積極的に活用し、物品費を削減します。既に大多数の施設が行っているかとは思いますが、紙やプラスチックを教育資材の一つとして利用することはSDGsの教育にも繋がり、とても重要です。
- 省エネ設備の導入:省エネ効果の高い設備を導入したり、LED照明を使用することで光熱費を削減します。一時的な支出の増加となるため、しっかりした予算管理のものと進めましょう。
- 空調の適切な設定:空調の設定温度を見直し、エネルギー効率を高めます。例えば、夏は冷房の設定温度を1度高く、冬は暖房の設定温度を1度低くするなどです。ただし、子どもたちの体調に配慮した設定にすることは忘れてはいけません。
- 個人デバイスの利用:保育士個人のスマホやパソコンを利用することで、デバイス購入に係る費用を軽減し、慣れているデバイスの利用による業務効率化の効果があります。ただし、個人情報の取り扱いにも影響があるため、セキュリティ面の対策は十分に行う必要があります。
その他の施策
- 保険の見直し:保険内容を見直し、無駄のない保険契約を行います。例えば、保険代理店と相談して最適な保険プランに変更などです。
- SNSを活用した情報発信:保育園の広告には費用のかからないSNSを活用し、情報を発信することも考えられます。例えば、FacebookやInstagramで園の活動やイベント情報を発信するなどです。一方で、今後保育所の飽和が懸念されている状況を鑑みても、全く施設の広告を行わないという判断は将来的なリスクに繋がる可能性が高いです。
- 事務処理の効率化:業務プロセスを見直し、事務処理の効率化を図ります。ICTツールの導入による電子化による書類管理の効率化、コンサルタントによる業務フローの見直しも有効かもしれません。
経費削減と保育の質の両立
経費削減を追求する一方で、保育の質を犠牲にしないことが重要です。以下のポイントを押さえることで、経費削減と保育の質の両立を図ることができます。
ルールと計画の明確化
経費を削減することは経営の安定に繋がりますが、一方で、必要なものへの投資を滞ることで、長期的に施設への信頼低下に繋がる可能性があります。このような事態に陥らないように、一定のルール定めて、中長期的な計画を立て、それに基づき実行する社内プロセスを構築することが重要です。
効果的なコミュニケーションと研修・教育
職員間での円滑なコミュニケーションを図り、情報共有を徹底することで、無駄な業務を削減し、保育の質を維持します。また職員のスキルアップを図るための研修や教育を効率的に行い、保育の質を高めながら、業務効率も向上させます。
外部リソースやICTの活用
業務の効率化と質の向上を目指して、外部リソースの利用やICTツールの導入を検討します。一時的な支出の増加の可能性はありますが、専門家の知識の利用やクラウド型の保育管理システムを活用し、情報管理や業務プロセスの効率化を図る事ができるようになります。
保護者との連携
保護者との密なコミュニケーションを通じて、保育園の取り組みや方針を共有し、信頼関係を築きます。例えば、定期的な保護者会やアンケート調査を実施するなどです。またここで上がった保護者の声を参考にし、次の投資先を考えて予算を考えることも重要です。
まとめ
経費削減を成功させるためには、以下のポイントを押さえて取り組むことが重要です。
継続的な見直しと改善
経費削減の取り組みは一度きりではなく、継続的に見直しと改善を行うことが必要です。例えば、定期的に経費項目をチェックし、無駄な支出を削減するための新しい方法を模索します。
全職員の意識改革
経費削減は経営者だけの責任ではなく、全職員が一丸となって取り組むことが重要です。例えば、節電や物品の無駄使いを減らすための啓発活動を行い、職員全員が経費削減に対する意識を高めます。
専門家や業務委託の利用
経費削減の取り組みにおいて、専門家のアドバイスやシステムの利用を考えるのも有効です。例えば、コンサルタントやBPOサービスの活用、ICTツールなど、効果的な方法を導入します。
今回ご紹介したような施策が一つでも読者の皆様の役に立ち、健全な保育園経営がなされることを期待しています。