問題提起:
保育業界における求人市場は変化の兆しを見せています。保育士の有効求人倍率は依然高いままですが、待機児童問題には変化が見られ始めました。しかし、高い離職率や採用難も業界を悩ませています。
記事を読んでわかること:
本記事では、保育士の求人市場の動向や採用トレンドについて詳しく解説します。離職率の背景や待機児童問題の影響、さらには保育士にも園児・保護者にも選ばれる保育施設としての戦略についても探ります。保育業界の現状や将来の展望について理解を深めることができます。
記事を読むメリット:
保育業界に関わる方々や採用担当者にとって、業界の課題や可能性を把握することは重要です。本記事では、現状の問題点とその解決策、そして将来の展望について包括的に取り上げます。保育士不足の背景や採用のポイントを理解し、より良い採用戦略を立てる手助けとなるでしょう。
保育士の現状
保育士の有効求人倍率
保育士の有効求人倍率は高く、求人件数が多い状況です。2020年7月時点での有効求人倍率は2.29倍、直近の令和5年1月の保育士の有効求人倍率は3.12倍(対前年同月比で0.2ポイント上昇)となっており、全職種平均の1.44倍(対前年同月比で0.17ポイント上昇)と比べると、依然高い水準で推移しています。(一般職業紹介状況(職業安定業務統計)(厚生労働省)より)
保育士の離職率
一方で2020年の保育士の離職率は9.0%です。公立施設では4.6%、私立施設では10.8%となっています。保育士の離職率は他の業種と比較して高いと言われていますが、日本の平均離職率(15.0%)と比べると、それほど高くはありません。ただし、潜在的に「保育士を辞めたい」と考えている方は多いようです。
保育士の人手不足は依然として続いており、待機児童問題を背景に供給が追い付いていない状況です。
保育士求人情報で注目されるポイント
他の施設との差別化
給料と待遇
保育士の給料は低いため、給料や賞与、昇給に関する情報を明確に記載することが重要です。また人事評価制度をしっかり整備することも重要なポイントになります。
勤務時間と業務量
シフト例や保育時間、残業時間などを明示し、ワークライフバランスをアピールします。時短勤務や時差出勤も可能な限り導入を検討する事も重要です。
休暇の取りやすさ
保育士は休みが取りにくいイメージがやはり強いです。有給休暇や休日に関する情報を記載し、働きやすさを示します。
職場の雰囲気
外部との接触も限られている保育園では、どうしても閉鎖的な職場環境となってしまい、職場の雰囲気が就業する上で大きなポイントとなります。職員同士のコミュニケーションや保育施設の雰囲気を伝えることで、その点の不安を払拭することも大切です。
保育方針
園の方針や特色を明確に記載し、他園との違いを明記しましょう。
保育業界の転換点:2025年問題
一方で、求人だけでは解決できない、社会的な状況についても見ていきます。
待機児童問題の解消
昨今の日本において働く女性が増えているため、女性の就業率の上昇、それに伴い共働き家庭が増加し、保育施設の需要は高まっています。一方で、日本の人口は減少基調が続いており、0〜5歳の人口も減少しています。保育の対象児童数は2025年にピークを迎え、その後はゆるやかに減少する見込みです。2000年以降の保育園の民営化もあり、待機児童の解消が進み保育所の供給が利用児童数を上回る地域も出てきています。
現役世代の減少
2025年以降、現役世代人口が年々減少、さらに団塊の世代が後期高齢者となり社会保障負担が増大する懸念があります。またデジタルネイティブ世代がビジネスパーソンの半分近くを占めると言われており、DXが加速することが予想されます。このような状況下で、現在のような低賃金・重労働なイメージを持たれてしまう保育士は敬遠されてしまう可能性が出てきてしまいます。
保育施設に求められること
選ばれる園になるために
集客: 利用者に使いやすいウェブサイトやSNS運用を強化し、若い層にアプローチすることが重要です。
営業: オンラインでの園見学や成長ストーリーの可視化を行い、保護者に選ばれる園になりましょう。
継続率: 保育の質を向上させ、保護者満足度を高めることが必要です。
学生・求職者から選ばれる園になるために
採用専用サイトの作成: 新卒用と中途用に分けて採用サイトを作成しましょう。
体験: 1日保育体験や職員座談会を実施して、安心感を提供します。
クロージング: お問い合わせからの迅速な対応や体験後のフォローを行い、採用をスムーズに進めましょう。
既存職員から選ばれる園になるために
ファン化: 経営理念への共感を高め、働きやすい環境を整備しましょう。
安心感: 個別面談や職員の成長をサポートする仕組みを整えます。
環境: 就業環境の整備や人間関係の構築に注力します。
上記はほんの一例です。保育業界はこれからさらなる変化が予想されています。選ばれる園として、質の高い保育そして労働環境を提供し続けることが求められています。
まとめ
他の業界同様、保育業界も今後社会情勢に大きく影響されることが予想されます。その中で、保育士不足の解消が求められており、保育士の処遇改善が必要です。
保育業界は子どもたちの成長に深く関わる重要な分野であり、保育士の採用には十分な注意と戦略が必要です。技術革新の活用や多様性・包括性の重要性を考慮しながら、将来の採用方針を検討しましょう。 また保育士の業務をサポートするような外部リソースの利用や研修プログラムの充実といった採用以外の方針を検討するのも一つの解決策と言えるでしょう。