問題提起: 多くの企業が面する業務上の課題は、効率性やリソースの適正利用に関するものです。例えば、紙帳票の運用による時間とリソースの浪費、人手不足による業務の安定的な運営の難しさなどが挙げられます。

記事を読んでわかること: この記事では、BPO(Business Process Outsourcing)を導入した企業の成功事例を取り上げ、その効果や具体的な取り組みを紹介しています。BPOを活用することで、業務の効率化やコスト削減、従業員満足度向上などが実現されています。

記事を読むメリット: この記事を読むことで、BPO導入が企業に与える具体的なメリットや成功事例を理解することができます。また、適切な業務の委託先選定や実行についてのヒントを得ることができ、自社の業務改善や競争力向上に役立てることができます。

BPOの成功事例はあるのか?

国内・国外問わず、BPOによる業務効率化やコスト削減の事例は多くあります。また社内環境のみならず、顧客満足の向上にも繋がる事も多くあります。以下の各社の事例を確認してみましょう。

国内企業の事例

ENEOSグローブ株式会社

背景

ENEOSグローブは、LPガス業界でトップシェアを誇る企業であり、国内販売の25%以上を占めています。彼らは毎月約1,500件の帳票を郵送しており、請求書の発行と送付は各支店にとって負担でした。紙帳票が伴う業務の見直しを模索していました。

課題

郵送による紙帳票の運用において、発送漏れや重複作業が発生していました。
また、紙ベースの帳票業務に時間とリソースを費やしていました。

BPO導入の効果

ENEOSグローブは、キヤノンのBPOサービスを活用することで、以下の効果を実現しました。
システムの導入:
帳票発送業務の時間短縮とコスト削減を実現しました。
紙帳票から電子帳票への移行により、効率的な業務運用を実現しました。
環境への配慮:
カーボンニュートラルの推進に寄与し、環境保護に貢献しています。 電子帳票の導入により、紙の使用量を削減し、持続可能なビジネスプラクティスを実現しています。

月桂冠株式会社

背景

月桂冠株式会社は、1637年に創業され、京都・伏見で最古の酒蔵として知られています。日本有数の酒処であり、醸造技術と歴史的風土を活かして、新たな日本酒文化の発信と普及を推進しています。

課題

受注業務の人手不足が慢性的に問題となっていました。また物流部門での受注業務は属人化しやすく、人材の入れ替えや退職による業務の安定的な継続に課題がありました。

BPO導入の効果

業務の標準化とマニュアル整備:
BPO導入により、受注業務の標準化とマニュアル整備を実現、人が入れ替わっても、安定的に業務を運営できる基盤を整備に寄与しました。
FAX受注からEDI比率の向上:
BPO導入前はFAX主流の注文でしたが、EDI(電子データ交換)の活用を推進、当初のEDI比率62%から現在は82%にまでアップしました。
人的リソースの最適化:
自社社員はより付加価値の高いコア業務に専念できるようになりました。
誤受注率の低減:
業務標準化とデジタル活用により、誤受注率は0.016%から0.003%以下に減少、また9人で行っていた受注業務を、2名少ない7人体制とより少ない人数で安定稼働することができるようになりました。

株式会社ドトールコーヒー

背景

株式会社ドトールコーヒーは、日本全国に1400店舗以上を展開するコーヒーの焙煎卸業を営む企業です。彼らは毎月約200件を超える社内からのPC/スマートフォン/社内システム関連の問い合わせに対応していました。

課題

問い合わせが重なり、同時対応が難しく、順番待ちや電話がつながらないといった課題が発生していました。また、FAQや問い合わせ履歴が蓄積されておらず、知識と経験に頼る属人的な対応も課題でした。

BPO導入の効果

株式会社ドトールコーヒーは、キヤノンのBPOサービスを活用することで、以下の効果を実現しました。オフサイトセンター型のITヘルプデスク導入:
自社運営のIT/PC関連の問い合わせ窓口を廃止し、オフサイトセンター型のITヘルプデスクを導入しました。またFAQや問い合わせ履歴を蓄積し、知識ベースを構築しました。これにより同時対応が可能となり、問い合わせの迅速な解決を実現しました。
従業員満足度向上:
従業員は順番待ちや電話がつながらないストレスから解放され、スムーズな問い合わせ対応が行えるようになりました。さらに属人的な対応から脱却し、統一された知識ベースに基づいたサポートが提供されています。

YKKビジネスサポート株式会社

背景

YKKビジネスサポート株式会社は、YKKグループのシェアードサービス会社で、経理・人事・総務の業務を受託しています。

課題

仕入先に対して毎月約6,000社に検収明細(検収金額と明細を通知する帳票)を発行し、郵送で送付していました。郵送による発送漏れや重複作業が発生しており、紙ベースの帳票業務に時間とリソースを費やしていました。

BPO導入の効果

即日配信が可能:
BPOを導入したことで即日配信に切り替え、問い合わせが減少しました。
印刷コスト削減:
受取企業からは高い評価を受けており、WEB配信により印刷~郵送にかかるコストを大幅に削減できました。
具体的には、郵送1通あたりのコスト(印刷・封入・郵送料などを考慮)を平均で100円と仮定すると毎月の検収明細発行数約6,000社 × 100円/通 = 600,000円のコストが削減されたことになります。

Chubb損害保険株式会社

背景
Chubb損害保険株式会社は、世界最大級の損害保険会社であり、日本で最も古い歴史を持つ外資系保険会社です。個人・法人向けに損害保険商品を展開しており、クラシックカー専用の自動車保険など、特徴的な商品も扱っています。約11年前に「中央業務センター」を発足し、一部業務をアウトソーシングしていましたが、属人的な業務運営に課題を抱えていました。

課題
ベテランスタッフが属人的に業務を行っており、社員と業務委託スタッフの役割と責任範囲が不明確。繁忙期に増える業務量は社員が残業をしてカバーをする状況でした。

BPO導入の効果
Chubb損害保険株式会社は、キヤノンのBPOサービスを活用することで、以下の効果を実現しました。
マニュアル整備と多能工(マルチタスク)化:
属人的な業務運営体制を解消し、社員と外部委託業務を明確に切り分けました。社員はコア業務に特化できるようになり、業務の効率化を図りました。
社員の残業削減:
業務量に応じ、パソナで柔軟な人員シフトを展開することにより、社員の残業が削減されました。 繁忙期でも適切な人員配置が行え、労働時間の適正化を実現しました。

国外企業の事例

Slack Technologies, LLC

背景
2009 年にブリティッシュ コロンビア州バンクーバーで設立されたアメリカのソフトウェア会社で、独自のコミュニケーション プラットフォーム Slack で知られています。

BPO導入の効果
カナダのデザインチームを雇い、ベータ版を大成功となる製品に発展させました。ウェブサイト、ロゴ、モバイルアプリの開発を外部クリエイターに委託することで、Slackは250ドルの投資から、2017年7月時点で総額50億ドルの価値を生み出しました。

まとめ

BPOは多くの企業にとって効果的な戦略です。特定の業務を専門的に委託することで、効率化やコスト削減、顧客体験の向上、競争力の強化などが実現されています。今回ご紹介した具体的な企業は大手企業ばかりですが、多くの中小企業においてもBPOの導入によって多くの組織が成功を収めています。

BPOの成功には適切な業務選定、信頼性の高い委託先の選定、コミュニケーションの密度などが重要な要因となります。慎重な計画と適切な実行を通じて、企業の競争力向上に向けた重要な取り組みとなることでしょう。