問題提起:
近年食物アレルギーを持つ子どもが増えています。アレルギーにも様々な種類があり、基本的な知識や対応方法を現場で働く保育士はしっかり把握しておく必要があります。アレルゲンの除去や安全な給食の提供方法について確実な対応を取ることができているでしょうか?
この記事を読んでわかること:
この記事では、アレルギーはどうして起こるのか、アレルギーの症状、対策について詳しく説明します。保育園でのアレルギー児への対応についてもわかりやすく説明しています。
この記事を読むメリット:
この記事を読むことで、保育園での現在の対応が適切であるのかを確認することができ、アレルギーに関する知識を再確認し、保育園での日々のアレルギー対応や職員研修等につなげることができます。
食物アレルギーとは
アレルギーは、免疫系(体を病原体(ウイルスや細菌など)や異物(アレルゲンなど)から守るための防御システム)が通常は無害な物質(例えば食物、花粉、動物の毛など)に対して過剰に反応する状態をいいます。その中でも食物アレルギーとは、特定の食品に対して免疫系が過剰に反応する状態です。食物アレルギーを引き起こす食品として、特に牛乳、卵、小麦、大豆、落花生、魚介などが知られています。
アレルギーの症状と診断について
症状としてはくしゃみ、鼻水、目のかゆみといった軽度の症状から、じんましん、呼吸困難、アナフィラキシーといった重篤な症状までさまざまです。血液検査や皮膚テストを行い、特定の食品に対するアレルギー反応を確認し、診断されます。
治療と予防について
食物アレルギーと診断された場合、最も効果的な予防策はアレルゲンとなる食品を完全に避けることです。また、軽度の症状には抗ヒスタミン薬を使用することがあります。エピペンと呼ばれるアドレナリン自己注射器を持ち歩くことも、重篤なアレルギー反応に対する有効な対策です。
このように、食物アレルギーは日常生活に大きな影響を与える可能性があります。適切な知識と対策を持つことで、そのリスクを管理することが可能です。
食物アレルギーで引き起こされる症状について
食物アレルギーは多様な症状を引き起こし、これらは軽度から重度まで幅広くあります。主な症状には以下のようなものがあります。
皮膚症状
じんましん:赤い発心やかゆみが現れます。
アトピー性皮膚炎:乾燥やかゆみを伴う発疹が長期間続くこともあります。
呼吸器症状
くしゃみ、鼻水、鼻づまり:アレルゲンに反応して、鼻の粘膜が炎症を起こします。
喘息:呼吸困難や息切れ、咳が起こります。
消化器症状
嘔吐や下痢:消化器系がアレルゲンに反応して激しい反応を引き起こします。
腹痛、胃痙攣:食後数分から数時間で現れることがあります。
口腔症状
口や喉のかゆみや腫れ:特に生の果物や野菜を摂取した後に見られることがあります。(口腔アレルギー症候群)
全身症状
アナフィラキシー:急速に進行する全身性の反応で、呼吸困難、血圧低下、意識喪失などを伴う可能性があります。緊急対応が必要です。
食物アレルギーは一人ひとりで症状が異なり、多岐にわたる症状を引き起こします。適切な管理と予防策を講じることが重要です。
保育園でのアレルギー対応方法
保育園でのアレルギー対応は、どのように行っているのでしょうか?子どもたちの安全と健康を守るために非常に重要です。日々の対応は適切であるかを定期的に職員間で確認することも大切です。
アレルギー情報の収集と共有
保護者からの情報収集
入園時にアレルギーの有無、過去のアレルギー反応の詳細を確認します。生活管理指導表を医師に記載してもらい、保育園への提出を求めましょう。生活管理指導表とは、保育園が個々のお子さんへの適正な対応について、医学的な判断に基づき検討ができるよう、保護者・保育園・主治医で情報を共有するためのツールです。給食のアレルギー対応は、保護者からの申請ではなく医師の診断によって行うことになっています。
個別のアレルギー対応計画
各子どものアレルギー情報をもとに、対応計画を作成し、全スタッフに共有します。原則として、家庭で食べたことのない食材は保育園では提供しません。家庭で2回以上試して問題がないことを確認していただいた上で、保育園で提供することができます。
安全な給食提供
アレルギー除去メニューの作成
栄養士がアレルゲンを含まない特別メニューを作成し、栄養バランスを保ちながら提供します。また、保育園では完全除去を原則としています。保育園では多くの子どもたちが同じ場所で食事をするため、アレルゲンが他の食事に移るリスクがあります。また、多くのスタッフが子どもたちの世話をしているため、完全除去の方針を取ることですべてのスタッフが一貫した対応を取ることができ、アレルギー反応のリスクを減少させることができます。
調理場の分離
アレルゲンを含む食材と分離して調理を行うため、専用の調理スペースを確保します。調理場が狭い等、確保できないこともあります。そのような場合はアレルギー対応食と通常の食事を別の時間に調理することで、クロスコンタミネーションを防ぎます。アレルギー対応食から先に調理をして密閉し、完成してからアレルゲンを含む食材を調理することが必須です。アレルゲンを含んだ食材を調理した人は、アレルギー対応食には触れないようにします。
専用食器・器具の使用
アレルギー対応食の調理には専用の調理器具や食器を使用し、クロスコンタミネーションを防ぎます。
※クロスコンタミネーションとは、アレルゲンが意図せずに別の食品や物質に混入することを指します。これが原因でアレルギー反応が引き起こされることがあります。例えば、アレルギー物質を含む食材を扱ったナイフやまな板を、そのまま別の食材に使用すると、アレルゲンが移ってしまう可能性があるということです。
給食提供
提供時には、献立表を確認しながら食材を読み上げ、アレルゲンを含む食材が入っていないこと、どの食材に代替えになっているかを調理した者と給食を提供する者(取りにきた者)とで確認を行い、その後提供します。保育室内もアレルギー児とその他の子どもでテーブルを分け、 担当職員はアレルギー児の近くにいて、食事中の様子を注意深く見守ります。アレルギー反応が出た場合に迅速に対応できるようにしましょう。
緊急対応体制の整備
エピペンのお預かり
エピペンは、アナフィラキシー(重篤なアレルギー反応)の症状が出たときに使用するための補助治療剤です。アナフィラキシーの治療薬であるアドレナリンが注射針一体型でセットされており、症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐことができます。必要に応じてエピペンを常備し、使用方法をスタッフ全員が理解していることを確認します。
緊急対応マニュアルの作成
アレルギー反応が発生した際の緊急対応マニュアルを整備し、スタッフ全員に周知します。(医療機関への連絡や薬の使用、保護者への連絡など)
教育と情報共有
定期的な研修
スタッフ全員に対して定期的にアレルギーに関する研修を行い、最新の知識とアレルギー児の情報、対応方法を共有します。大切なのはパート保育士や事務スタッフも含めたすべてのスタッフを対象にすることです。そうすることにより事前にアレルギー問題が起きないように全員で防止策を講じる事、そして万が一起こってしまった場合に、誰であっても迅速な対応が可能となる体制を構築することができます。
保護者との連携
保護者と定期的にコミュニケーションを取り、アレルギー児の状況について情報を共有します。保護者からのフィードバックも大切にします。
環境整備
清潔な環境の維持
保育室や給食室の清掃を徹底し、アレルゲンの混入を防ぎます。スタッフでの毎日の取り組みはもちろん、スタッフの業務軽減のために外部委託を利用することも有効です。
玩具や教材の管理
玩具や教材にアレルゲンが含まれていないかを確認し、定期的に消毒します。特に0歳・1歳クラスはまだ玩具を口に入れてしまう事もあります。玩具自体にアレルゲンがなくとも、定期的に消毒を行う事が効果的です。
サポートとフォローアップ
継続的なフォローアップと情報収集
アレルギーの状況を定期的に見直し、必要に応じて対応策を更新していきます。
これらの対応方法を実施することで、アレルギー児が安全かつ快適に保育園で過ごせる環境を整えることができます。また、アレルギー児も他の子どもたちと同じ給食が食べられたり、一緒にできる食育を考えることも大切です。
また厚生労働省より、保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂)というものが出されていますので、以下を参考にしてください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000476878.pdf
子どものアレルギー克服方法について(アレルギー負荷試験とは)
食物アレルギーの克服には、専門家の指導が必要となります。経口免疫療法(OIT)とは少量のアレルゲンを徐々に増やしながら摂取することで、体の耐性を高める方法です。アレルギーの管理は個々の状況に応じて異なるため、診断から免疫療法まで医師と相談しながら最適な方法を見つけることが大切です。
アレルギー負荷試験(食物誘発性アレルギー負荷試験)とは
食物アレルギーの診断に使われる方法の一つです。この試験では、患者にアレルギーを引き起こす可能性のある食物を摂取させ、その後の反応を観察します。
負荷試験の手順
STEP1.事前準備
患者の既往歴やアレルギーの症状を確認します。
STEP2.食物の摂取
患者にアレルギーを引き起こす可能性のある食物を摂取させます。通常、医療施設で行われます。
STEP3.観察と記録
患者の反応を観察し、症状の発現時間や程度を記録します。
STEP4.診断
観察結果に基づいて、食物アレルギーの有無を診断します。
負荷試験の流れ
STEP1.診断と評価
医師がアレルギーの診断を行い、患者の健康状態を評価します。
STEP2.初期段階
卵を非常に微量(数ミリグラム)で摂取します。この段階ではアレルギー反応が起こる可能性があります。
STEP3.増量段階
徐々に卵の量を増やし、体が卵に慣れるようにします。この段階では医師が患者の反応を観察し、必要に応じて薬を処方します。
STEP4.維持段階
患者が一定量の卵を安全に摂取できるようになるまで続けます。この段階ではアレルギー反応がほとんどないか、軽度であることが期待されます。
STEP5.フォローアップ
定期的なフォローアップで患者の健康状態を確認し、必要に応じて調整を行います。
例えば、卵アレルギーを克服するためのアレルギー負荷試験では、アレルギー反応を減少させるために卵を少量ずつ摂取して行きます。このプロセスは専門医の監督のもとで行われ、段階的に卵の量を増やしていくことで、卵アレルギーの克服につながります。しかし、アレルギー負荷試験にはリスクも伴います。アレルギー反応が重篤になる可能性があるため、常に医師の監督のもとで行うことが重要です。
まとめ
この記事では、保育園でのアレルギー児への対応について詳しく説明しました。アレルギー対応は子どもたちの健康と安全を守るために不可欠です。特に小さな子どもたちはアレルギー反応が重篤になることもあるため、適切な対応が求められます。また、子どもによってもアレルギー症状は様々なため、1人1人にあった対応方法を検討することも重要です。定期的にアレルギー研修を行い、正しい知識を身につけることで、確実な対応を取れるようにしていきましょう。子どもたちが安心して過ごせる環境を作ることが求められています。
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今回ご紹介した食物アレルギー対応に関する補助業務として、対応計画や緊急時マニュアルの作成はもちろん、栄養士によるアレルギー除去メニューの作成やアレルギー研修も行っています。またDX化にも強みを持ち、システム導入や利用サポートを行いながら、保育園の単なるシステム化ではない、仕組みづくりをお手伝いします。人材不足はもちろん、業務効率化ができない、年々コスト増に困っているなど、保育園経営にお悩みの方は是非一度、弊社にご相談下さい!