問題提起:
保育園運営においても、「戦略(Strategy)」と「戦術(Tactic)」は重要なキーワードです。しかし、この2つの違いを正確に理解し、適切に使い分けることができている園は多くありません。戦略と戦術を混同することで、資源が無駄になったり、運営が思うように進まなかったりすることがあります。

記事を読んでわかること:
本記事では、戦略と戦術の違いをわかりやすく解説し、さらに目的・目標との関係性についても触れながら、それをどう活用するかについて、具体例を交えながらご紹介します。

読むメリット:
この記事を読むことで、戦略と戦術を正しく理解し、保育園の運営をより効率的で成果の上がるものにするための第一歩を踏み出すことができます。

戦略と戦術の違いって?

まずは、戦略と戦術の定義と特徴を確認しましょう。

戦略(Strategy)とは

戦略は、保育園が長期的に目的を達成するための資源配分の選択を含む大枠の計画を指します。これには「地域で選ばれる保育園になる」「保護者の満足度を向上させる」といった方向性の決定が含まれます。

特徴

  • 長期的な視点で考えられるもの
  • 大枠の計画や方向性を示す
  • 人的資源や予算をどこに重点的に使うかリソースの配分を決めます。
  • 目的や目標を達成するための手段
  • 保護者や地域からは直接見えにくいもの

  「地域の子育て支援拠点として信頼される園を目指し、保護者向けセミナーやイベントを定期開催する」

  「ICTを活用し、効率的な園運営を実現することで職員の働きやすさを向上させる」

戦術(Tactic)とは

戦術は、戦略を実行に移すための具体的な行動計画(プラン)です。戦略が「どのように目標を達成するか」という大枠を示すのに対し、戦術はその枠組みを細かく分解し、「具体的に何をするか」を示します。

特徴

  • 短期的な行動計画
  • 戦略を支える具体的な施策
  • 現場で実行可能な内容
  • マーケティングの過程で保護者が実際に見たり聞いたり、体験したりするもの


先ほどの例に基づく戦術は、

  • 保護者向けセミナーを月1回開催する
  • 園児の成長を記録したフォトブックを定期的に配布する
  • SNSで保育の様子やイベント情報を発信して認知度を高める

戦略と戦術の違いを簡単に比較

項目戦略(Strategy)戦術(Tactic)
定義長期的な方向性を示す大枠の計画、資源配分戦略を実現するための具体的な行動
目的全体的なゴールに到達するための指針現場で実行する具体的なアクション
地域での認知度向上を目指す地域イベントへの出展、広報チラシの配布

戦略と戦術の重要性と混同によるリスク

戦略と戦術はどちらが重要か?

戦略が間違っている(弱い)と正しい方向に資源を投下できず、戦術が間違っている(弱い)と目的にたどり着かない。ではどちらが大切でしょうか。

正解は「戦略(Strategy)」になります。

それはなぜか。簡単な旅行を例に考えてみます。
現在地点である東京から、大阪のA地点に向かいたいと考えています。この場合正しい戦略とは西に向かうという事です。そして正しい(強い)戦術とは早く着く事ができる移動手段になります。この場合、戦術である移動手段は当然新幹線の方が優秀で、徒歩を選ぶより、確実に早く到着することができます。しかし、そもそも戦略として東に向かってしまっては目的地にたどり着きません。ましては東に向かって飛行機という戦術を使ってしまった場合は現在地点より、更に遠く移動してしまう事になります。現実的には、ここまで極端な事は起こりにくいかもしれませんが、たとえば、「SNSを活用して園児を募集する」という戦術を選んだ場合、そもそも戦略が「若い保護者層にリーチすること」でなければ、方向性がずれてしまいます。その結果、リソースが無駄になるリスクがあります。

この事から戦術よりも戦略が重要であることが分かるかと思います。

戦略と戦術を混同した場合のリスク

以上の事例から、正しい戦略がある事が正しい戦術である以上に、目的達成には重要であることが分かります。つまり戦略の大きなミスは戦術ではカバーしきれないという事になります。また、戦略と戦術を混同すると、以下のようなリスクが発生すると考えられます。

全体像が見えなくなる

戦術に偏りすぎると、目標達成のための道筋が見えなくなります。例えば、「SNS広告を出そう」というアイデアが出ても、なぜその広告を出すのか、どのような効果を期待するのかが不明瞭になります。

方向性がブレる

戦略がないまま戦術を実行すると、異なる方向に力を分散してしまい、結局何も成果が上がらないという事態に陥りがちです。

時間と資源の無駄

戦術だけを追求してしまうと、重要でない活動に時間やコストを費やす可能性があります。

保育園での戦略と戦術を活用する方法

戦略:活動の大枠を決める

  地域性の分析: どのエリアで園児を獲得するか。

  保育園の特徴を明確化: 「少人数制保育」「英語教育」など差別化ポイントを設定する。

戦術:戦略を実現するための施策を実行する

  保護者説明会を定期開催し、直接交流を図る

  園児の日常をSNSで発信して親しみを持ってもらう

  地域の子育て支援センターと提携して認知度を向上させる

このように戦略と戦術を明確に分けることによって、効果的なマーケティング活動を行う事ができるようになります。

目的・目標・戦略・戦術の関係性とは?

戦略と戦術を効果的に使うには、「目的」と「目標」も含めた全体像を理解することが重要です。

「目的」「目標」についての詳細はこちら

定義と役割

項目定義例(IT企業の場合)
目的事業活動の根本的な意義や方向性を示す地域で必要とされる保育園を目指す
目標測定可能で期限付きの具体的なゴール次年度までに新規園児20名を確保
戦略目標を達成するための全体的な方向性や計画若い保護者層にリーチし、信頼を得る
戦術戦略を実行するための具体的な行動プランウェビナー開催、広告出稿、SNS配信

関係性と流れ

目的・目標・戦略・戦術の関係は以下のように連鎖的に成り立っています。

  1. 目的を基に「目標」を設定する
  2. 目標を達成するために「戦略」を策定する
  3. 戦略を実現するために「戦術」を具体化する

具体例

目的を明確にする
例:地域で必要とされる愛される保育園を目指す
目標を設定する
例:次年度までに0歳児から5歳児までの空きクラスがないように新規園児20名確保
戦略を策定する
例:若い保護者層にリーチし、信頼を得る
戦術を具体化する

  SNSで保育内容を発信
  保護者向けセミナーを開催
  地域イベントに積極的に参加

このような目的から戦術までの正しい流れを把握することで、効果的かつ効率的な経営環境の構築がなされるようになります。

まとめ

「戦略」と「戦術」の違いを理解し、それを目的・目標と結びつけることができれば、保育園運営がより効果的になります。重要なのは、常に「なぜその行動を取るのか?」という視点を持つことです。
戦略が明確であれば、限られたリソースを最大限に活用できます。そして戦術はその方向性に従って無駄なく実行できます。まずは自園の目的と目標を見直し、それに基づく戦略と戦術を整理するところから始めてみましょう!